●《鳴兎子》とは
《鳴兎子》は、東北地方の南部あたりに設定された、周囲を山々に囲まれた直径およそ50kmほどの盆地である。
盆地のほとんどは《鳴兎子湖》と呼ばれる広大な湖に満たされており、湖より湧き出す霧が常に湖を覆い、盆地を満たし、周囲の山々にまで広がって、幻想的で謎めいた、そして不気味な風景を生み出している。
湖の周囲、そして周囲の山々の一部が、人々が生活を営む場であり、いまだ人の気配の薄い霧の原野に、漁村や山村、そして《夢想都市》の本体、《鳴兎子市》が散らばっている。人の生活の領域と言えど、いや、なればこそ、人の心の闇が堆積し、惨劇や呪詛を秘め隠した因縁となって、冷たく乾いた合理性を装った生活に、呪われた触手を絡みつかせている。
《鳴兎子》の山々には、盆地には、そして湖の島々には、その意味を推し測ることすら困難な、奇妙な古の遺跡が点在し、
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