ナスの谷 (The Vale of Pnoth/特になし) |
土地 |
『夢の国』 |
『夢の国』の地下の深淵、トゥロク山脈に守られて広がる谷間。不可視のドールが穢らしく這いまわって窖をうがつ慄然たる谷と伝説に謳われている。 食屍鬼の棲む岩山の下にあたり、その食事によって数知れない骨が谷に投げ落とされている。ナスの谷は闇と恐怖と沈黙、そして無数の骨によって埋め尽くされ、その骨の山を鳴らす音を立てながらドールが這いずり回っている。ちなみに『夢の国』の地底に棲む食屍鬼は、たびたびガグの地下王国に潜入して墓地からその死体を収穫するので、ナスの谷の骨の山には時おり、巨大なものも混ざっている。 ングラネク山にある大いなるものの秘密を守る夜鬼は、山に登る侵入者を捕らえると、ングラネクのいたる所に口を開く洞窟から地底の深淵へと抜け、ナスの谷に置き去りにする。 ナスの谷を埋め尽くす無数の骨の山はあるいは、そうして置き去りにされた者や、ドールの餌食となった者の亡骸が多数を占めているのかもしれない。 |
H・P・ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』 |
南極(ピム) (The Antarctic/特になし) |
土地 |
南極 |
ここで紹介するのは現実の南極ではない。エドガー・アラン・ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語(The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket)』に描かれた南極地帯である。この作品が発表された当時、南極についてはようやく陸地が確認されたばかりで、全体像や奥地についてはいまだ謎に包まれていた。そのため、この作品に登場する「南極」は創作された幻想世界となっている。 主人公ピムの同行したイギリスの漁業・貿易船ジェイン・ガイ号は南極海域の探検に乗り出し、流氷をかいくぐって、氷のない温暖な海へと出た。南緯81度21分、西経42度の位置にまで出ると、気温は51度(おそらくは華氏51度、11℃に相当)となる。大量の鳥、ホッキョクグマより巨大な白い熊、鯨など、生物も豊富に棲息している。 南緯82度50分、西経42度20分の位置には、岩だらけの無人島があり、ガイ船長によって「ベネット島(Bennet's Islet)」と命名されている。 南緯83度20分、西経43度5分に達すると、海の水が異常に黒ずんでいる。この海域に8つの島からなる群島があり、その一つがツァラル島である。 西南にはまた別の群島があり、頑丈な大きなカヌーをもちいて航行する住民が住んでいるという。 ツァラル島から南南東へ航行すると、風、潮流ともに南極点へむかって流れている。南極点の方向には薄鼠色の蒸気のようなものがたなびいていて、オーロラのような変化をみせるが、やがてその中に閃光がまたたくのが見えてくる。海水は異様に温かくなり、ミルクのような色と濃さになってくる。空からは灰に似た白い粉が降りそそぐ。 南極点にみえる蒸気のようなものが、天から流れ落ちてくる瀑布であると視認できる頃になると、白い粉はますます大量に降りそそぎ、白い海水は手を入れられないほど熱くなり、海の底からまばゆい光が射す。瀑布からは白い鳥たちが飛来し「テケリ・リ( Tekeli-li)!」という鳴き声をあげる。瀑布には切れ目があらわれ、その奥には、屍衣につつまれ、雪のように白い肌をした、巨大な人型のものが立っている。 こうした南極の幻想的な描写は、ラヴクラフトの『狂気の山脈にて(At the Mountains of Madness)』において、「テケリ・リ!」という叫び、白い鳥たち、南極の最奥にねむる得体の知れないなにか、などといった要素でオマージュが為されている。 |
E・A・ポー『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』(The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket)』 |
ニル (Nir/ニール) |
都市 |
『夢の国』、スカイ河流域 |
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H・P・ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』 |
ノトン (Noton/特になし) |
山 |
ロマール、オラトーエ付近 |
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H・P・ラヴクラフト『ポラリス(Polaris)』 |