ダイラス=リーン (Dylath-Leen/特になし) |
特になし |
都市 |
『夢の国』 |
『夢の国』にある大都市であり、南海に注ぐスカイ河の河口に位置する。対岸にはパルグの町があり、黒人奴隷や象牙細工、黄金を輸出している。 ダイラス=リーンには玄武岩造りの角張った細い塔が林立し、やはり玄武岩で造られた無数の埠頭を有し、地球上のあらゆる土地の船乗りはおろか、地球にあらざる土地の者も僅かに混じっていると噂されているが、実際、月の怪物の黒いガレー船が時折来航し、月の裏側で採れたルビーとパルグの奴隷を交換するべく、人間に変装したレンの住人が、取引のために港に降り立つ。『夢の国』の地球ではルビーの産地は知られていないため、彼らの売る品は珍重される。 また、南海に浮かぶオリアブ島のバハルナをはじめ、多くの港と取引をしている。
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H・P・ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』 B・ラムレイ『ダイラス=リーンの災厄(Dylath-Reen)』 |
ダニッチ (Dunwich/ダンウィッチ) |
特になし |
村 |
アメリカ、マサチューセッツ州北部中央 |
アイルズベリイ街道を少し外れた所に位置する寒村。蛇行するミスカトニック河とラウンド山に挟まれるようにして廃屋が多数を占める家屋群がひしめいている。 付近の山々は余りにも形が丸く整いすぎて不安感を煽り、そうした山々には、かつて原住民が邪悪な儀式を執り行っていたと伝えられる背の高い環状列石がそびえている。ラウンド山では禁断の存在が召喚されたという往時のように、山の地下から時々不気味な音響が響き渡り、科学者もいまだ原因を突き止めるに至っていない。草一本生えない荒涼とした不毛の山腹は〈悪魔の舞踏園〉と呼ばれ、その不毛の原因についての伝承が伝えられている。
村へ達するまでの道に幾つもある、深さも定かでない深い渓谷や峡谷には危なげな木の橋が渡されており、こうした谷の特定の場所で、時折目に見えないものが突進する音が聞こえるという。
ダニッチは、あたり一帯で最も古い村であるが、村の住民は長年に渡る外部との孤立の結果、頽廃を極め、村における犯罪、殺人、近親相姦の例は枚挙にいとまがない。ウェイトリイ家やビショップ家といった名家の末裔のいくつかは嫡男をミスカトニック大学やハーヴァード大学に進学させてはいるが、そうやって外部に進学した者は、ほとんど村に戻って来ない。 ある恐ろしい事件が勃発してから、ダニッチを示す標識は全て取り払われてしまい、この村はますます荒廃の度合いを深めている。
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H・P・ラヴクラフト『ダニッチの怪(The Dunwich Horror)』 A・W・ダーレス『丘の夜鷹(The Whippoorwills in the Hills)』 A・W・ダーレス&H・P・ラヴクラフト『暗黒の儀式(The Lurker at the Threshold)』 『破風の窓(The Gable Window)』 『閉ざされた部屋(The Shuttured Room)』 『恐怖の巣食う橋(The Horror from the Middle Span)』 |
タラリオン (Thalarion/サラリオン) |
千の驚異の都、千の驚異の魔都 |
都市 |
『夢の国』 |
ラヴクラフトの『白い帆船』に登場する『夢の国』の都市。灯台守バザル・エルトンの乗りこんだ白い帆船が、ザルに続いて通過した場所。 目覚めの世界や『夢の国』にある、いかなる都市よりも壮大であると言われ、神殿の頂が見えないほどに高い尖塔のある神殿を持つ。灰色の厳めしい城壁に囲まれており、そこからは不気味ながら魅力的な装飾や彫刻に飾られた屋根が覗いている。海辺には石造りの埠頭を持ち、その側には巨大な彫刻門アカリエルがある。 この都には人間が空しく極めようとする神秘の全てがあるといわれ、多くの者が入り込んだが、戻って来た者は一人としていない。都の中は人間でなくなった者どもと魔物が闊歩し、その通りは都を支配する妖怪ラティを目にしたものどもの骨で白く埋まっているという。ゆえに、白い帆船はこの都も通り過ぎ、ズーラまで青い鳥に導かれてゆく。 D・モジッグは『白い帆船』を心理学の観点から捕えた『『白い帆船』―心理学的オデュッセイ("The White Ship" The Psychological Odyssey)』の中で、タラリオンは決して意識化される事のない《集合的無意識》の最も深い領域で、都を闊歩するものどもは原初の人間の経験から生じた原型であるとしている。この原型は人間の基軸、すなわち骨で、通りに溢れる白骨がその暗喩であるとしている。
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H・P・ラヴクラフト『白い帆船(The White Ship)』 『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』 |
チェイムバー屋敷 (Chambers' House/特になし) |
特になし |
土地 |
アメリカ、マサチューセッツ州アーカム |
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R・ブロック『窖に潜むもの(The Creeper in the Crypt)』 |
ツァン高原 (Tsang Plateau/特になし) |
特になし |
土地 |
中国奥地(チベットを指す?) |
中国奥地にあるといわれる不毛の高原。チベット中央の西部、ツァン地方(Gtsang)、あるいはそのどこかを指すのかも知れない。 過酷な気候の支配する辺境であると同時に、数多の謎に満ちた恐ろしい地であり、スティールブラス、トールマン、マックウィリアムズ、ヘンリイ、ホウムズなど幾多の探検家がこの地に挑んでは果てていった。生きてツァン高原を踏破した数少ない例外にリチャードスンがいる。 リチャードスンはツァン高原を踏破し、「ツァンの象神」ことチャウグナル・ファウグンの安置されていた洞窟にたどり着いた。その記録によると、洞窟は昼も夜も黄色い「無貌の異様な崇拝者」に守られていたという。獣人とも呼ばれる彼らは、何らかの邪悪な魔術に捕われたほとんど人間じみたところのない崇拝者であり、四つんばいになって彫像(恐らくはチャウグナル・ファウグンそのもの)を取り巻き、口にするも憚られるような忌まわしい儀式に加わっていたという。 しかし、リチャードスンの記録を読んでツァン高原に挑んだアルマンが見た守護者は、特に人間と変わるところのない者たちである。 ツァン高原を踏破した数少ない生存者には他に、考古学者コープランド教授がいる。1913年に探検隊を率いてツァン高原に踏み込んだコープランド教授は、ムーの滅亡から逃れてこの地に辿り着いた巫術士ザントゥーの墓所を発見したものの、のちにソ連との国境で錯乱状態のところを発見された。 また、白毛の類人猿のような怪物ミ=ゴが出没し、周辺の住民からは恐れられている。このミ=ゴの正体はユゴスからのものだとの説もあるので、彼らの前線基地もこの地に隠されているかもしれない。
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F・B・ロング『恐怖の山(The Horror from the Hills)』 L・カーター『墳墓の主(Dweller in the Tomb)』 |
ツァラル島 (Tsalal/特になし) |
特になし |
島 |
南極 |
ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語(The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket)』に登場する、南極圏の島であり、作中において重要な位置を占めている。作品が書かれた当時は、南極については外縁部が探検されていた程度であったため、このツァラル島もふくめた、ほぼ空想の世界となっている。 『アーサー・ゴードン・ピム』 に描かれる南極は、周辺の海こそ現実とおなじく流氷に覆われているが、南緯80度付近をこえると氷のない温暖な海へと出る。南緯83度20分、西経43度5分に達すると、海の水が異常に黒ずんでいるが、ここにツァラル島が見える。 その周辺は絶壁と砂洲にかこまれているが、島の南東部にある深い湾から上陸することができる。このあたりから砂洲にそって航行すると、大量のなまこの生息地にたどり着く。 内陸部は森に覆われているが、その植生および岩石は他の地域のものとはまったく異なっている。しかしもっとも異様なものは川の水であり、さまざまな色合いをした数種類の水の混合物として存在している。それぞれの水質は完全に交じり合うことがなく、切り分けることすら可能である。そのため、この水はさまざまな紫の色合いをみせる、なかばゴムのような濃い液体に見える。しかしそのほかの性質は普通の水と変わらず、飲むこともできる。 内陸へ3時間、9マイルほど歩き、けわしい谷を抜けると、その先の谷間に原住民がクロック・クロック(Klock-Klock)と呼ぶ、島で唯一の集落にたどり着く。 島では数え切れないほど多種の魚が採れるが、その大部分はニュージーランド南方のオークランド諸島で採れる魚に似ている。一方、動物は、ゾウガメが大量に棲息しており、カモシカのような脚をしたブタのような家畜や、もっと大きく黒い家畜、怖ろしげな姿をした無毒のヘビなど、奇妙なものが棲息している。鳥も様々なものが生息しており、いろいろな種類の鳥が家禽として飼育されている。この島の動植物で特筆するべき特徴は、白いものが存在しないということであり、アホウドリなども黒い色をしている。 この島について、作中でもっとも重要な要素は、湾から集落への道のとおっている険しい谷の右手にある切り立った丘である。この丘の上から東へすすむと黒い花崗岩の洞窟に達する。この洞窟は非常に入り組んだ形をしていて、いくつかの穴が繋がった形になっているのだが、これを上から見ると、エチオピア語で「陰、影、闇」をあらわす巨大な文字になっているのだという。 そして、この洞窟の東の端の袋小路には、泥灰土の壁に文字のようなものが刻まれている。実際、これはアラビア語の「白い、光」をあらわす言葉と、エジプト語の「南の領域」を指す言葉が書かれている。そして、おなじく刻まれているおぼろげな人物像らしいものは南を指し示しているのである。また、作品の最後では、島の「ツァラル」という名も、こうした言葉とかかわりがあることがほのめかされている。 そして、作品はつづいて、唐突に次の謎めいた言葉があらわれて締めくくられるのである。 (我はそれを丘のなかに銘じた、そして亡骸への我が復讐は岩のなかに) |
E・A・ポー『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』(The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket)』 |
テロス (Teloth/テロース) |
花崗岩都市 |
都市 |
??? |
茨の繁るシドラク山(Mt Sidrak)を越えた古い石橋を渡ったところにある都市。 石造りの堤防によって隔てられるズロ河(River Zuro)のほとりにあり、ゆったりとした流れの起点であるカルティア丘陵(Karthian Hills)のはるか彼方にはリュートと舞踏の都市、オオナイがあるという。 狭い通りに陰気な花崗岩の四角い家屋が立ち並ぶこの町には緑がない。この町の神々は労働に励むことを善としており、死の彼方に光の安息所を約束している。果てしない安らぎがあるというその水晶のような冷たさの中では、心を思考で、目を美しさで悩ませる事もないとされている。そしてテロスの町には、もはや笑いも歌もなく、実利的な労働に精を出すことが法で定められており、それ以外の生業を持つ者は追放される。 陰気で重苦しくいかめしい民は実益にしか興味を示さず、美を疎んじる態度をとる。しかし、春になるとカルティアの丘陵を見やり、旅人が告げる遥かなオオナイのリュートに思いを馳せることがある。 旅人イラノンはこの町を訪れ、ムリンの塔(Tower of Mlin)の前にある広場で歌を歌ったが、テロスの民はほとんどが彼の歌を拒み、執政官によって勤労か退去かの選択を強いられた。ゆえにイラノンは美にあこがれる少年ロムノドをつれて遥かなオオナイへと旅立つ。 『イラノンの探究(The Quest of Iranon)』は美と夢の申し子イラノンが、現実に存在しない理想郷アイラを探し求める物語だが、物語の最初に登場するこのテロスは、美とも夢とも縁のない乾燥した現実を象徴していると考えられる。
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H・P・ラヴクラフト『イラノンの探究(The Quest of Iranon)』 |
トゥロク山脈 (Peaks of Throk/スロク山脈、トォーク山脈) |
特になし |
土地 |
『夢の国』 |
『夢の国』の地下に果てしなく広がる薄ぐらい深淵に、人の想像をはるかに凌いでそびえ立つ灰色の大山脈。食屍鬼が『夢の国』の地下世界にて根城とする岩山はトゥロク山脈よりも高く、そこから行けるのがガグの地底王国なのだから、この深淵がいかに広大かがうかがい知れる。 大気中に灰色の燐光をひらめかす鬼火が発する峰々の狭間に分け入り、岩窟の湿りをおびた凄まじい強風の層を抜けて下りると、ドールが這いまわるナスの谷がある。南海に浮かぶオリアブ島のングラネク山の地底にあると考えられる。ングラネク山の秘密に挑む者は夜鬼に捕らえられ、トゥロク山脈を過ぎてナスの谷へと連れ去られる。
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H・P・ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』 |