Cthulhu Monsters(ら行)






ラーン=テゴス

(Rhan-Tegoth/特になし)

特になし
旧支配者 旧支配者/不明

 三百万年前に北極を支配していた存在。ロマール文明が興る前に北極に栄えていたものの残存であるらしい。

 かつてロマールにあった『ナコト写本』の第八断片に記される、アラスカのヌトカ川上流の巨大な石像都市の廃墟の地下で、象牙の玉座に鎮座して眠っていたが、人間の手によってロンドンのロジャーズ博物館に運ばれた。地球に到来する以前は、ユゴス(冥王星)の暖かい深海都市に棲んでいたという。

 直径6フィート(約1.8メートル)の球形の胴には、先端に蟹の様な鋏を備えた、曲がりくねる長い手足が六本生えている。胴の上部からは、魚じみた丸い目が三つ三角様に備わり、一フィート(約30cm)もある柔軟な長い鼻が生えた、やはり球形の頭が生えており、その横からは(えら)に似た器官が膨れ上がっている。こうした三角様の目や傾いた鼻は、人間には理解できない残忍さ、貪欲さ、憎悪及び太陽系のものでない異質な感情を匂わせるものである。
 全身は、先端にはコブラの様な口のついた、毛の様に細かい吸引管に覆われ、それは頭の上と鼻の下で太く長くなっている。頻繁に獲物を求めるラーン=テゴスは、捕らえた獲物を押し潰し、全身にこの吸引管を押しつけて血を吸い取るのだ。

ラーン=テゴス崇拝、或いは召喚の呪文は次の通りである。

Wza-y'ei! Wza-y'ei!
Ykaa haa bho-ii
Rhan-Tegoth - Cthulhu ftagn
Rhan-Tegoth
Rhan-Tegoth
Rhan-Tegoth!


 呪文の中に「クトゥルー フタグン」の文句があるので、この存在もクトゥルーに関係が深いものかも知れない。

 また、ラーン=テゴスが死ぬと〈旧支配者〉は二度と戻れないとも言うが、真偽の程は定かではない。

 H・ヒールド&H・P・ラヴクラフト『博物館の恐怖(The Horror in the Museum)』


ラティ

(Lathi/ラーティ)

特になし
***** *****

『夢の国』にある都市「千の驚異の都」タラリオンを支配する妖怪。この都の通りはラティを目にした者の骨が散乱して白く見えるという。

 D・モジッグは『『白い帆船』―心理学的オデュッセイ("The White Ship" The Psychological Odyssey)』の中でタラリオンを、決して意識化されない《集合的無意識》の最も深い領域とし、都を闊歩するものどもは原初の人間の経験から生じた原型=人間の基軸(骨)、通りにあふれる白骨はその暗喩であるとしている。とすれば、ラティは人類の無意識に潜み、その核心を露わにして、原初の怪物あるいは屍のような本質を剥き出しにする存在だろうか。

 H・P・ラヴクラフト『白い帆船(The White Ship)』


ルギハクスの住人

(Inhabitants of L'gy'hx/リクスの住人 )

特になし
独立種族 *****

 ルギハクス(天王星)の住民。無数の脚が生えた立方体の金属生命体。双面の蝙蝠神ルログを崇拝し、年に一回、信徒の中から出る希望者の脚を切断して、これに捧げるという儀式を行っている。

 かつてシャガイの昆虫がルギハクスに飛来した折りには彼等との共存の道を選んだが、一族の中から昆虫族の影響を受けてアザトース崇拝の忌まわしい儀式に加わる者が続出したために、ルログへの改宗者を除く昆虫族(といっても、改宗者の方が多くなっていたようだが)をルギハクスから追放した。

 R・キャンベル『妖虫(The Insects From Shaggai)』


ルリム・シャイコース

(Rlim Shaikorth/特になし)

白蛆
***** *****

 超古代のヒューペルボリアに、極地の彼方の宇宙から巨大氷山イイーキルス(Yikilth)に載って訪れた異次元の生物。

 象海豹よりも大きい、太った白い蛆の様な姿を持ち、半ばとぐろを巻いている尾は体の体節程の太さで、体の前端の白い円板にある顔の中央には、開閉を繰り返す口裂が醜く開き、浅い鼻孔の上にある、左右迫った眼窩からは血の様に紅い玉が次々とこぼれ落ちている。

 ルリム・シャイコースは様々な世界を渡り、イイーキルスから放たれる凄まじい寒気と、全てを灼き尽くす白い光で、各地を滅ぼして回り、生き残った者を言いくるめ、僕としてイイーキルスへと迎えた。なぜなら、生き残った者は、ルリム・シャイコースの食糧となりうる身体に変化する可能性を持っているからだ。 こうして集めた僕をルリム・シャイコースは喰らい、犠牲者は永遠にその体内に囚われる事になる。

 一旦は信徒となったものの、犠牲者の呼びかけからルリム・シャイコースの正体を知ったムー・トゥーランの魔道士エヴァグによって脇腹を裂かれ、噴き出した黒い体液でイイーキルスを溶かし尽くして滅びた。

 C・A・スミス『白蛆の襲来(The Coming of the White Worm)』


ルログ

(Lrogg/ル'ラグ)

双面の蝙蝠神
独立種族 *****

 ルギハクス(天王星)に住む立方体の金属生命体によって崇められている神。神としては比較的下級らしいが、ルログの信者はこの神に恩を施してもらう代償として、年に一回、希望者の脚を切断してこの神への捧げ物としている。
 シャガイの昆虫族がルギハクスに飛来すると、昆虫族にもアザトースの忌わしい祭儀からルログの寛大な祭儀に転向するものが出、ルギハクスの住民と昆虫族からなるアザトース崇拝者が追放された後もルギハクスに残留した。

 R・キャンベル『妖虫(The Insects From Shaggai)』


レンの住人

(Men of Leng/特になし)

レンの人間もどき
独立種族 *****

 『夢の国』レン高原の灰色の荒涼とした平原に、石造りの村を築いて棲む生物。石造りの小屋の小さな窓からもれる青白い炎と、踊りの際に鳴らされる、低く咽び泣くような笛や不快なシンバルの音は、レンの近隣の人々に不吉がられている。

 かつてはレン高原を支配して、有翼獅子の像に護られるサルコマンドを始めとする都市群を築いた。しかし、黒いガレー船に乗って月から到来した月の怪物の侵略の前に屈服し、現在では彼等を神と崇めて隷属している。

 彼等は小さな角、大きな口、蹄のついた短い脚、矮小な尾を持ち、全身を黒い柔毛に覆われている醜悪な姿だが、やや人間に似ており、変装すれば浅黒い肌の人間(或いは食屍鬼)に見えるため、月の怪物が秘密裡に人間との通商等を行う際に利用される場合がある。だが、大半はガレー船で『夢の国』の月面に連行され、肉付きの悪いものは苦役に就かされ、太ったものは月の怪物の食用にされる。

 H・P・ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』


ロイガー

(Lloigor/特になし)

星間宇宙の風に乗りて歩むもの、星を踏み歩くもの
旧支配者 旧支配者/風

 ツァールの双子であり、「双子の卑猥なるもの」「忌むべきツァールと憎むべきロイガー」などと並び称せられる。ツァールよりも頻繁に語られるが、ツァールほど強大ではないらしい。

 ダーレスとスコラーの合作『潜伏するもの(The Lair of the Star Spawn)』では、ミャンマー奥地のスン高原にある忘却の都市アラオザルの地底にツァールと共に封印されており、眷属であるチョ=チョ人が地下洞窟を掘り下げ、地底に封じられた主を解放しようとしている。その姿は緑に光る目と幾つもの長い触腕を持つ、巨大な震える肉の塊であり、内部からは異様な唸りが発せられているという。
 しかし、チョ=チョ人に捕らえられていたフォ=ラン博士とエリック・マーシュに召喚された星の戦士によって、ツァールとともにアラオザルごと破壊された。

 しかし、後の作品である『サンドウィン館の怪(The Sandwin Compact)』では、アークトゥルスに幽閉されており、アークトゥルスが地平線上にある時に風と共に地上に現れて力を発揮するという設定になった。ヒビ程度の狭い隙間を通り抜け、犠牲者の衣服をそのままに、肉体だけをばらばらにして空に巻き上げてしまう事もできる。

 ダーレス神話における風の精の一として、ツァールおよびハスターイタカと共に語られるが、奇妙なことにハスターの宿敵たるクトゥルーとも度々、一緒に言及されている。『サンドウィン館の怪』では「クトゥルーロイガーの落とし子」という部分があり、ロイガーの崇拝の文句と思われる呪文にもイタカシュブ=ニグラスに加えてクトゥルーの名がある。

 なお、コリン・ウィルソンの『ロイガーの帰還(The Return to the Lloigor)』には「ガタノトーア」と呼ばれる存在を指導者とするロイガー族という種族が登場するが、ロイガーガタノトーアとは、名前のみを借りた別の存在である。

 A・W・ダーレス&M・R・スコラー『潜伏するもの(The Lair of the Star Spawn)』
 A・W・ダーレス『サンドウィン館の怪(The Sandwin Compact)』


ロイガー族

(Lloigors/特になし)

星の生き物、星の住人達
独立種族 *****

 コリン・ウィルソンの『ロイガーの復活(The Return to the Lloigor)』に登場する種族。同作品はウィルソンがクトゥルー神話を取り入れながら独自の世界を展開した作品であり、ロイガー族はこの作品における〈旧支配者〉的な存在である。
 この種族も名こそ同じだが『星間宇宙の風に乗りて歩むもの』であるところのロイガーとはかなり趣を異にしている。

 作中ではロイガー族は邪神ロイガーの、一族の首長的存在である『暗黒のもの』ガタノトーアは邪神ガタノトーアのルーツとしている。ロイガー族は不可視、不定形の〈力の“渦”〉として存在する種族であり、人類のように個人単位で独立したり、意識、無意識、超意識が分離したりしていない統合体としての精神を持っている。もっとも、彼らは可視の姿をとる事もでき、緑色で、蛇や悪魔を思わせる忌まわしい貌をした『海の怪物』ヤムビとしてムーのシンボルとされていた事もあった。

 彼らは太古の昔、宇宙の彼方(一説によるとアンドロメダ星雲)から地球に飛来した。無意識や超意識というものを持たず、宇宙の現状を余さず捉えて受け入れた彼らは、極めて悲観的な精神構造を持ち、それを生活の基本としていた。しかし、そうした彼らの性質は、いまだ若く、発展の道を辿っている若い惑星地球からは反発と敵意を以って迎えられたので、ロイガー族は地球での生活するために楽観主義に立って自分達の手足として働く奴隷として人類を創り出したのである。2万年前から2千年前にかけてムー大陸ではロイガー族が奴隷である人類を酷使して生活していた。
 その後、ロイガー族は地球の環境の中で急速にその力を弱め、対照的に奴隷達は進化し、人類と呼ばれる存在となった。やむを得ず、ロイガー族は自分達の力を高密度で石や岩に封じ込め、新陳代謝を低下させるために、地底や海底へと退いた。また、レバノンのシドンやセイロンのアヌラーダプラでのように水の底に棲み潜む場合もあり、この場合には、その水に粘りつくような緑色や青味がかった灰色が現れる。
 時折、彼らは故意に、或いは偶然に、拠り所である石や岩から噴出して大量のエネルギーを振りまく事があり、それによって消滅したムーやアトランティスを始め、世界各地にその痕跡が残っているという。

 C・ウィルソン『ロイガーの復活(The Return to the Lloigor)』


ロボン

(Robon/特になし)

特になし
旧支配者 旧神

 ゾ=カラールタマシュ、と共に、サルナスの都を築いた髪の黒い羊飼いの民に崇拝された、サルナスの三神の一柱。

 H・P・ラヴクラフト『サルナスを襲った災厄(The Doom that Came to Sarnath)』