Cthulhu Atras(は行)






ハリの湖

(Lake Hali)

土地
ヒヤデス星団?
特になし

 ハスターカルコサと絡められて語られることの多い名であり、それらの名称と同様の変遷をたどってきた。

「クトゥルー神話」成立以前に、アンブローズ・ビアースの『カルコサの住人(Inhabitant of Carcosa)』の中でまず言及され、死や霊魂についての言葉を残した古代の人物として語られている。
 ロバート・チェンバースはこの名称を『評判を回復する者(The Repairer of Reputations)』『ドラゴン路地にて(In the Court of the Dragon)』『仮面(The Mask)』などの作品で、ハスターカルコサとともに主人公の幻視に現われるイメージとしてハリの湖を用いた。恐らくは『黄衣の王』に記された名称で、カルコサの地にあるハリの湖は「不毛にして空虚で、風や波が乱すこともない」とされ、二つの太陽が沈む光景が見られるという。
 ラヴクラフトはチェンバースの用いたハリの湖ハスターなどと共に、『闇に囁くもの(The Wisperer in Darkness)』の中で、ヴァーモントの森の中でユゴスからのものやその協力者たちの会合の中で囁かれる言葉の一つとして用いた。

 ここに至るまで、ハリは、もっぱら雰囲気を醸し出すための謎めいた名称として用いられていた。しかし、ダーレスはスコラーとの共作『潜伏するもの(The Lair of the Star Spawn)』の中で、初めてハスターを神として扱い、『旧神』による追放先として「ヒヤデス星団のハリ」を挙げた。これ以降、ダーレスを中心としてハリの湖ハスターの封印された地であるとされた。またチェンバースと異なり、カルコサ同様、ハリの湖はヒヤデスの見える地ではなく、ヒヤデス星団そのものにあるとされた。

A・ビアース『カルコサの住民(Inhabitant of Carcosa)』
R・W・チェンバース『評判を回復する者(The Repairer of Reputations)』
           『仮面(The Mask)』
           『ドラゴン路地にて(In the Court of the Dragon)』
H・P・ラヴクラフト『闇に囁くもの(The Wisperer in Darkness)』
A・W・ダーレス&M・R・スコラー『潜伏するもの(The Lair of the Star Spawn)』
H・P・ラヴクラフト&A・W・ダーレス『破風の窓(The Gable Window)』


蟇の神殿

(Temple of the Toad/大蟾宮(だいせんきゅう)

神殿遺跡
中米、ホンジュラス
特になし

 中米のホンジュラスのジャングルの奥にある古代遺跡。フリードリッヒ・フォン・ユンツトの『無名祭祀書』に記されているが、ゴールデン・ゴブリン・プレス版では所在地がグアテマラになっているなど、不正確な記述が目立つ。
 他の中米の遺跡とは似ても似つかず、現地の先住民の言い伝えによると、この神殿を立てたのは彼らとは異なる人種であるらしい。

 神殿は全て非常に硬質の玄武岩で造られているが、それが途方もなく風化するまでにこの神殿は古い。入り口は密閉され、中心となる丸い部屋の中央には巨大な円筒形の祭壇があり、その後方には天然の崖を利用した壁を繰りぬいて石室が作られている。
 その中には高僧のミイラが安置されているが、その容貌は原住民ではなく、下エジプトの退化したとある種族を思わせるらしい。ミイラの首には、蝦蟇の形に彫られた大きな赤い宝玉が銅鎖で掛けられているが、鎖にはハンガリーのシュトレゴイカバール〈黒の碑〉に刻まれているものとかすかに似た象形文字が刻まれている。

『無名祭祀書』によると、この神殿について記述されているが、それによると神殿では滅亡した古代の人種が異様な神を崇拝していた場所であり、宝玉は祭壇の地下にある神殿の宝へと導く『鍵』であるという。だが、神殿の宝とは神殿の ―― すなわち、触手と蹄を供えた、薄気味悪い声で笑う巨大なものの事である。

R・E・ハワード『屋根の上に(The Thing on the Roof)』


ヒューペルボリア

(Hyperborea/ヒュペルボレア、ハイパーボレア)

土地
極北地方?
特になし

 C・A・スミスの幻想作品中で描かれている世界。ヒューペルボリアとはそもそも、ギリシア語で『北風の彼方』を意味する伝説の地『ヒュペルボレイオス(Hyperboreios)』であり、古代ギリシアのプリニウスが『博物誌』などの著書の中で記している、北方の不死の理想郷である。
 かつて女怪ゴルゴンの三姉妹が棲んでいたが、勇者ペルセウスに倒されてからは人が住むようになり、平和な不死の島となった。

 スミスの作品の中でのヒューペルボリアは、氷河期が到来する前に極北の地に栄えた超古代文明の地を指す。北はムー・トゥーラン半島(Mhu Thulan)から、南はツチョ・ヴァルパノミ(Tscho Vulpanomi)の湿地帯まで広がる土地である。また、『アタマウスの遺言(The Testament of Athammaus)』によると、太平洋や大西洋方面とも交易を行っていたらしい。
 ムー・トゥーランは現在のグリーンランドとほぼ位置を等しくしているというので、ヒューペルボリアがムーのように沈没しているのでなければ、現在の北米辺りに位置していたのかもしれない。
 この国の都は、西のエイグロフ山脈の最高峰ヴーアミタドレス山に近い大理石と御影石の王冠と形容されたコモリオムであったが、ロクアメトロス王の代にクニガティン・ザウムの災厄によって滅びてからは南方のウズルダロウムに移った。

 ヒューペルボリアでは文明は青銅器文明の段階に留まっていたが、ムー・トゥーランで大きな名声を得ていた魔道士 エイボンに代表されるように、魔法が実在し、権勢を振るっていた。
 末期には、ヘラジカの女神イホウンデーの神殿が権勢を振るい、ツァトゥグァへの崇拝を初めとする異教や異端に過酷な弾圧を加えていた。だが、ツァトゥグァの崇拝者であったエイボンの脱走と共にイホウンデーの神官モルギが行方不明となってからはツァトゥグァへの信仰が盛んになり、氷河期の到来によってヒューペルボリアが滅亡する最後の一世紀の間はヒューペルボリア全土にツァトゥグァの淫靡な崇拝が広がったのである。

 なお、ロバート・E・ハワードの作品群『コナン・シリーズ』の舞台であるハイボリア時代にもヒューペルボリアという地が存在し、ギリシャから見て真北にあたる現代のフィンランドからバルト地方に位置している。のちにハイボリア時代を席巻するハイボリア人の中でも、石造建築技術を開発したことで最も早く王国を建設した地域であり、ハイボリア人の多くがノルドヘイムの北人に圧されて大陸中央部へと南下するなか、氷河期の到来による北人の大攻勢まで北方の版図を守り続けた。
 しかし、『コナン・シリーズ』と、スミスのヒューペルボリア物語群との間には、繋がっている要素がさほど見られず、両作品群におけるヒューペルボリアは別個のものと考えたほうが良いかもしれない。

C・A・スミス『魔道士エイボン(The Door to Saturn)』
       『七つの呪い(The Seven Geases)』
       『アタマウスの遺言(The Testament of Athammaus)』
       『サタムプラ・ゼイロスの物語(The Tale of Satampra Zeiros)』
ロバート・E・ハワード『ハイボリア時代』(The Hyborian Age)』


ブリチェスター

(Brichester/特になし)

都市
イギリス、グロウスターシャー州
特になし

 

W・R・キャンベル『暗黒星の陥穽(The Mine on Yuggoth)』


蛇の巣

(Snake Den/)

土地
アメリカ、マサチューセッツ州アーカム近郊
特になし

 

H・P・ラヴクラフト『銀の鍵(The Silver Key)』


ボストン

(Boston/特になし)

都市
アメリカ、マサチューセッツ州
特になし

 

H・P・ラヴクラフト『ピックマンのモデル(Pickman's Model)』