Cthulhu Atras(や行)






ヤディス

(Yaddith/特になし)

惑星
外宇宙

H・P・ラヴクラフト『銀の鍵の門を越えて(Through the Gates of Silver Key)』


ユゴス

(Yuggoth/ユッグゴトフ)

惑星
太陽系九番惑星?

 太古の禁断の書で仄めかされる惑星で、冥王星と同一のものされている。ユゴスの甲殻生物は、この星を拠点として地球に飛来していた。
 ユゴスの甲殻生物にとって変わられていたと思われるヘンリー・エイクリイが、ウィルマース教授に語った所によると、暗い惑星上に、段を積み重ねた巨大な塔の形をした都市がそびえ、窓のない家屋や寺院、菌類の庭園が備わっているという。素晴らしいながらも人間の精神には耐えがたい光景という事だ。
 また、ユゴスには、彼ら以前にも住民が存在しており、黒い瀝青の河にかかる石積みの橋を建てたという。
 ラヴクラフトが『闇に囁くもの(The Whisperer in the Dark)』を発表したのは、ちょうど冥王星が発見されたばかりの頃(1930年)であり、発見されたばかりの謎めいた惑星を外宇宙からの生物の拠点として描くのは、かなり新鮮な効果をもたらしたであろう。もっとも、冥王星の実態もある程度明らかになっているゆえか、現代ではユゴスは冥王星とは別の星であるとしている作品も見受けられる。

 キャンベルの『暗黒星の陥穽(The Mine on Yuggoth)』には、イギリス、ブリチェスター近郊の〈悪魔の(きざはし)〉にある塔の最上階にあるスクリーンが、ユゴスに繋がっており、これを介して『甲殻蜥蜴』と呼ばれる生物が、地球へ金属を求めて訪れてきたとされている。金属を求めて地球に飛来する、「"甲殻"蜥蜴」という呼称から、ユゴスの甲殻生物と同一と見て間違いはないだろう。
 これによると、ユゴスの都市には黒い石畳の道、知識のイメージを頭に直接投影する装置のならぶ広場、排泄物を処理する灰色の柄と巻きひげのような蔓を持つ動物じみた菌類、などの設備がある。そして都市の周囲には約4分の1マイルおきに、ユゴスでのみ産するトゥク=ル金属の採掘坑が口をあけている。
 だが、その採掘坑の奥からやって来る存在の脅威を恐れて、すでに住民は逃げ去り、いまでは無人となっているという。

 ちなみに、海底に没したムー大陸のヤディス=ゴー山の地下に封じられたガタノトーアは、太古の時代にユゴス星人(ユゴスの甲殻生物かは不明)が連れてきた神、あるいは邪神であるという。

H・P・ラヴクラフト『闇に囁くもの(The Whisperer in the Dark)』


夢の国

(Dreamland/幻夢境、ドリームランド)

世界
不明

『夢の国』はその名の通り、人間が夢の中で訪れる世界である。

 この世界についてはラヴクラフトの『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』に詳しい。この話は、カダスの地を探し求めて『夢の国』を放浪するランドルフ・カーターの冒険を描いた話である。 カーターは「夢見る者」という、限られた人々(詳細は不明だが、カーターやクラネスのような、夢の美を強く求める人物であり、『夢の国』においてそれなりの地位と権利を認められるらしい)の一員であり、眠る事によって現の世界の門、浅き眠りの階段きざはし)、焔の洞窟、深き眠りの門を通り、『夢の国』へと入って行く。
『夢の国』にはカーター以外の人々も、目覚めの世界から訪れており、また、他の作品には『夢の国』での物語も描かれているので、カーターの見た夢でしかない可能性は少ないと思われる。もっとも、眠りを経なくとも、食屍鬼ズーグは特定の入り口から『夢の国』と目覚めの世界を行き来している。
 また、『夢の国』には、地球、月、土星、さらにはアルデバランやフォマルハウトといった天体も存在し、目覚めの世界に対応している。

 その性質や正体についてはあまりに謎の多い『夢の国』だが、その謎が、この世界の一つの魅力であると言えるのかもしれない。
『夢の国』は中世程度の文明を有し、目覚めの世界では見られない、様々な生物が存在し、カダスの地に住む「大いなるものども」や、彼らを庇護する蕃神ニャルラトホテップ、厳正なるノーデンスなどのしろしめす、幻想的な世界である。
 カダスレン高原ウルタール等を初めとする、不思議に満ちた土地が存在し、伝説や怪異に満ちた、まさに『夢の国』であると言えるだろう。

H・P・ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』


ヨト

(Yoth/ヨトフ、ヨス)

土地
地球内部

 地底に存在する赤く輝く世界。青く輝くクン・ヤンと繋がっている大空洞世界、あるいはその一部だという。

 かつてヨトには爬虫類に近い四足の種族が存在していたが、クン・ヤンの住民がこの地を征服する以前に既に、奇妙な遺跡を僅かに残して姿を消している(蛇人間の一種ではないかとも言われているが、定かではない)。ヨトの先住種族は、異種の動物同士を交配させる技術を有しており、クン・ヤンで乗騎として用いられる奇怪な生物ギャア・ヨトンも、その産物ではないかといわれている。

 ヨト最大の都市はズィン(Zin)といい、この地下から発見された『ヨト写本』にはツァトゥグァについて記されている。
 また、ヨトの地下にある暗黒世界ンカイには、ヨトの住民が出現する以前に偉大なる神と文明が存在していたと伝説は伝えている。
 これによりクン・ヤンの地にはツァトゥグァ崇拝が広まり、その信仰は地上のロマールにまで伝わったと言われている。

Z・ビショップ&H・P・ラヴクラフト『俘囚の塚(The Mound)』