Cthulhu Monsters(な行)






ナイアグホグア

(Nyaghoggua/特になし)

特になし
***** *****

 太古の昔にいずこかの地で崇拝されていたらしい神。詳細は不明だが、『イステの歌』には、この神の神官七名がアドゥムブラリの犠牲になったという記録が記されている。

 R・W・ロウンデズ『ナイアグホグア(Nyaghoggua)』(未邦訳)
             『深淵の恐怖(The Abyss)』


ナグ

(Nug/特に無し)

特に無し
***** 旧支配者/地

 遥か太古に、ムー大陸のクナアで、イェブと共にシュブ=ニグラスの子とされ(ラヴクラフトの作成した系図によると、ヨグ=ソトースシュブ=ニグラスの子であり、クトゥルーの親であるという)、彼等やイグと共に崇拝された神。

 現在では、地底世界クン・ヤンクトゥルーイェブと共に崇拝されている。
 また、L・カーターによると、ナイル川に沿う、閉ざされたハドスの谷にはナグに捧げられた墓があり、ネフレン=カーの信奉者にイェブと混同されて崇拝されているという。また、食屍鬼全ての親であるという説もある。

 H・P・ラヴクラフト&H・ヒールド『永劫より(Out of the Eons)』
 H・P・ラヴクラフト&Z・B・ビショップ『墳墓の怪(The Mound)』


ナス=ホルタース

(Nath-Hortharth/ナス=ホルトハース、ナス=ホーサス)

特に無し
旧支配者 旧神

 『夢の国』の神の一柱だが、「大いなるもの」とは一線を画する存在であるらしい。
 オオス =ナルガイでは、もっぱらこの神が崇拝され、この地にあるぬ幻影の都セレファイスにあるトルコ石造りの神殿には、蘭の花冠を頭に戴く、80名の神官達が奉職している。

 H・P・ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』


ニャルラトホテップ

(Nyarlathotep/ニャルラトテップ、ナイアルラトホテップ、ナイアーラトテップ、ナイアーラソテップ、)

這い寄る混沌、無貌のもの、闇に棲むもの、強壮なる使者、暗きもの、カルネテルの黒き使者

闇の魔神、古ぶるしきもの、魔物の使者、夜に吠ゆるもの、ユゴスに奇異なる喜びをもたらすもの、等

外なる神(異形の神) 旧支配者/地

 蕃神たちの魂魄にして使者と言われている奇妙な存在である。

「ニャルラトホテップ」の名の内、「ニャ(Nya)」は西アフリカの部族の間で使用される神の接頭語、「ル(R)」は古代エジプト語で「呪文」、「アト(at)」は「瞬間」という意味であり、「ホテップ(hotep)」は「満足する」という意味だという。純粋に人間による命名にしろ、音に意味を当てはめたにしろ、恐らくこの神が崇拝されていたという古代エジプトで確立した名であろう。

 この存在の誕生はラヴクラフトの見た夢にある。ある晩、ラヴクラフトは、様々な面で荒廃した末期の世に、エジプトからニャルラトホテップというる人物が現れる夢を見た。ニャルラトホテップは様々な文明の地を訪れて、不思議な器械を組み立て、電気学や心理学を中心として科学について多くを語り、各地で公演を行なった。ニャルラトホテップの訪れる先では平安は消え去り、人々は凄絶な悪夢に苛まれるようになる。
 余りの恐ろしい内容に、若干の手直しと、地球の終末を描きニャルラトホテップを蕃神たちの魂魄にして使者とする最終章を書き加え、短編『ニャルラトホテップ』として発表した。その後、この存在はラヴクラフトやブロックを初めとする作家達の手によって形作られてゆく。

 他の邪神たちに比べて人間に意識的に関わる事が多いが、その干渉の結末のほとんどは人間の破滅である。また、ブロックの『アーカム計画(Strange Eons)』でクトゥルー復活の為に暗躍したり、『尖塔の影(The Shadow from the Steeple)』で核開発に携わっているように、地球全体に破滅や混乱をもたらそうと画策していることも多い。

 恐らく、ニャルラトホテップアザトースをはじめとする「外なる神々」の、世界を混沌に帰そうとする意志の顕現なのだろう。ニャルラトホテップの行動原理は、訪れる先に混沌をもたらす事であり、「旧支配者」の復活や人類の破滅のために働くのも、人間の負の感情を吸収したり「旧支配者」に仕えているためなどではなく、宇宙を混沌に導く活動の一環に過ぎないのだろう。

 なお、ダーレス神話においては、〈旧神〉の封印を免れた唯一の邪神とされている。またの精の一柱として、の精の首領であるクトゥグァと敵対している。

 また、千とも言われる数多くの化身を持つ事でも知られている。〈輝くトラペゾへドロン〉を通じて召喚される闇をさまようものの姿や、ニャルラトホテップの地球上の棲みかといわれる米国ウィスコンシン州のリック湖の周りにあるンガイの森に現れる夜に吠ゆるものと呼ばれる不定形の姿、古代エジプトで「無貌の神」として崇拝された黒い無貌のスフィンクスの姿、コンゴの奥地に出現した混沌アフトゥ、などがある。
 さらに、人間からかけ離れた邪神にしては珍しく、人間の姿をたびたびとる。「暗黒の男」「カルネテルの黒き使者」、あるいは『アーカム計画』でクトゥルー復活のため暗躍する「ナイ神父」などがある。『未知なるカダスを夢に求めて』でも、虹色のローブをまとい輝く黄金の二重冠をいただく長身痩躯の人物としてランドルフ・カーターの前に現れる。古代のファラオを思わせる若々しい整った面貌をもち、王侯然とした誇らしげな態度をとり、暗黒神や堕天使の魅力を備えている。目の周りには気まぐれな気質を示す物憂いきらめきを湛えている。口調は穏やかにして忘却の川の荒々しい響きを持っている。『夢の国』を支配する大いなるものどもを庇護する存在として、カダスの城に君臨しているのである。
 夢の中に現れて啓示をもたらし、最終的には相手の肉体を奪ってしまう暗きものニャルラトホテップの一形態と考えられる。
 まさしく「混沌」としか形容しようのない変幻ぶりであり、ニャルラトホテップを無数の存在の集合体・総称とする説もある。

 H・P・ラヴクラフト『ニャルラトホテップ(Nyarlathotep)』
           『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』
           『魔女の家の夢(The Dream in the Witch House)』
           『闇をさまようもの(The Haunter of the Dark)』
 R・ブロック『無貌の神(The Faceless God)』
        『闇の魔神(The Dark Demon)』
        『暗黒のファラオの神殿(Fane of the Black Pharaoh)』
        『尖塔の影(The Shadow from the Steeple)』
        『アーカム計画(Strange Eons)』
 A・A・アタナジオ『不知火(The Star Pools)』
 M・S・マーチン『アルソフォカスの書(The Black Tome of Alsophocus)』


ニョグタ

(Nyogtha/ニョグサ)

 闇に棲むもの、旧支配者の同胞、ありえざるもの
旧支配者 旧支配者/地

 地底に棲む不定形の神。「闇に棲むもの」の名を持つために、同じ異称を有するニャルラトホテップの一顕現ではないかという説もあるが、定かではない。地底に棲み、黒い不定形の姿を持つという点ではツァトゥグァやその落とし子に似ているかもしれない。

 普段は地底の岩窟に潜んでいるが、時に、洞窟や亀裂を通して地上に召喚される事があり、レン、シリア、モンゴル、セーレムなどに現れたことがある。
 麝香の香りを漂わせる、信じられない程に巨大な、虹色にきらめく漆黒のアメーバ状の姿であり、一度その姿を地上に現せば、あたり一帯の全てを呑み尽くし、恐怖と破壊をもたらすことになる。

 輪頭十字(アンク)、ティクゥオン霊液(Tikkoun Erixir)、ヴァク=ヴィラ(Vach-Viraj)呪文を用いることによって、地底の住処へと退散させることができる。なお、 ヴァク=ヴィラ呪文については次の様な断片が明らかになっている。

Ya na kadishtu nilgh're...
stell'hsna kn'aa Nyogtha...
k'yarnak phlegethor...


 なお、セオフィリウス・ウェンなる人物の記した魔道書『真正魔術(True Magik)』にある七つの呪文のうち、悪霊を召喚する第七の呪文にはニョグタの名が随所に見られるという。セーレムに登場する『セーレムの恐怖』では怪物のような行動しかしていないが、意外に強大な神性なのかも知れない。

 J・P・ブレナン『第七の呪文(The Seventh Incantation)』
 H・カットナー『セーレムの恐怖(Salem Horror)』


ノーデンス

(Nodens/ノデンズ)

大いなる深淵の大帝、銀の手を持つ神
旧き神 旧神

 厳正なるノーデンスは、イルカの背に運ばれる、縁のぎざぎざになった大きな貝殻の中に、恐ろしいほど年を重ねた灰色の姿で鎮座し、皺だらけの手をもつ。

 夜鬼の支配者であり、蕃神の僕であるシャンタク夜鬼を恐れるのはこのためかもしれない(もっともニャルラトホテップ夜鬼を支配できるらしい)。

 また、ネプチューンやトリトン、海の精の楽隊を引き連れて、キングスポート北の岩山の頂上の『霧の高みの不思議な家』を訪れる事もある。
 この姿からは、ギリシアやそれに近い海洋民族の神のような印象を受けるが、ノーデンスの原典は、イギリスのセヴァン川の神だという。セヴァン川のあるグロウスターシャー州のローマ・イギリス寺院からはこの神にまつわる品が発掘されている。なお、興味深いことに、グロウスターシャー及びセヴァンはキャンベルの神話作品群でよく使用されている土地である。

 ラヴクラフトの『未知なるカダスを夢に求めて』 で、ランドルフ・カーターを救ったことから、ダーレス系神話では〈旧神〉の最高神とされており、『外なる神々』ニャルラトホテップに襲われているものを助けてくれる事があるという。もちろん、本当にその人間個人を対象とした慈愛によるものという確証はないが。

 H・P・ラヴクラフト『霧の高みの不思議な家(The Strange High House in the Mist)』
           『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』