マーテンス一族 (Martense Family/特になし) | |
特になし | |
独立種族 | ***** |
1670年、富裕なニューアムステルダム(ニューヨーク)の商人、ゲリット・マーテンスが、イギリスの支配を嫌い、ニューヨーク州キャッツキル地方の奥地に居を求めた。館の建てられた丘、「 青と褐色の特徴的な瞳を持つマーテンス一族は代々、イギリスの文化や人間を避けるよう躾けられ、外界から極端に隔絶した生活を送った結果、会話能力と理解力をはなはだ損なったと言う。やがて一族は館の使用人たちとも婚姻し、増えた館の住人の多くは麓の谷間にうつって部落を形成したが、残りのものは館に閉じこもってさらに社会から隔絶して排他性と無口さを増し、雷雨に興奮する性質を身につけた。 1754年、独立戦争にて植民地軍に加わった青年ジャン・マーテンスによってこうした事が外界に伝えられたが、1760年にマーテンス館に戻った頃には外界に染まっており、奇怪な性質を増す一族との摩擦が激しくなった。1763年、ジャンからの便りが途絶えたため、アルバニーに住む友人ジョナサン・ギフォードがマーテンス館を訪ね、殺害されたジャンの遺体を発見し、結果としてマーテンス一族は完全に孤立した。丘から漏れる光によって、一族が生きていることは確認されたが、1810年の暮れごろからそれすら見えなくなった。 その頃から、夏になって雷が鳴り響く季節になると、 100年の後、潜み住む恐怖の正体を暴くためにマーテンス館に潜入した探索者が地下室で見たものは、鋭い鉤爪と黄色の牙を持ち、もつれた毛に覆われる、白っぽい小さな、ゴリラを思わせる醜悪な類人猿の群だった。マーテンス館を中心に地下に棲み、人食いと共食いを行なってきたその肉食猿たちは、堕落していった果てに姿を消したマーテンス一族の特徴、青と褐色の瞳を持っていたのである。 ラヴクラフトの作品には、奇形や退化の恐怖を描いたものがよく見られるが、『インスマスの影(The Shadow over Innsmouth)』の深みのものどもや『故アーサー・ジャーミン卿とその家系に関する事実(Facts Concerning the Late Arthur Jermyn and His Family )』の猿人類のような異種族の介在しないマーテンス一族は、その要素が非常にストレートと言えるだろう。あるいは『洞窟の獣(The Beast in the Cave)』に登場する、鍾乳洞の獣人のアイデアに連なるものかも知れない。
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H・P・ラヴクラフト『潜み棲む恐怖(The Lurking Fear)』 |
ミ=ゴ (Mi-Go/ミ=ゴウ、マイ=ゴウ) | |
忌むべきミ=ゴ、忌まわしい雪男 | |
独立種族 | ***** |
ミ=ゴとはヒマラヤの伝説に登場する雪男の呼称の一つである。『闇に囁くもの』の中で、雪男やカリカンツァロなどの、僻地にひそむと言う怪物や妖精はユゴスの甲殻生物に由来することになっている。そのため、クトゥルー神話においては「ミ=ゴ」、「忌むべきミ=ゴ」はユゴスの甲殻生物の名称として用いられるのが一般的である。 しかし、リン・カーターの『墳墓の主』には、宇宙から飛来する甲殻菌類とはまったく様相を異にする、原型である「雪男」としての「ミ=ゴ」が登場する。ツァン高原に分け入ったコープランド教授の探検隊に、現地人から「ミ=ゴ」と呼ばれる、白いほつれた毛に覆われた、ひれ脚のようにも見える長い腕を持つ、顔のない巨大な類人猿の群れが襲いかかるのである。 このミ=ゴはユゴスの甲殻生物とは異なり、高度な異星文明とは何ら関わりもなく、異様な外見のほかは全くの獣人である。ユゴスからのものと同一の存在かどうか判断しがたく、別項で記載することにした。
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L・カーター『墳墓の主(The Doweller in the Tomb)』 |
三たび呪われし民 (The Thrice-Cursed/特になし) | |
特になし | |
独立種族 | ***** |
T・E・D・クラインの作品『王国の子ら』に登場する種族。 クラインの作品にしばしば見られるように、この種族もほのめかしやイメージによって、きわめて漠然と描かれているにすぎないが、推察を混じえながら紹介する。 なお、表題の『王国の子ら』は作中に登場する、ルソー(恐らくはアンリ・ルソー)の絵画の題でもある。ジャングルから青白い無表情な原住民たちの顔が覗いている絵だと描写され、この種族のイメージを暗示させるために差し挟まれた要素なのだろうが、絵の存在を確認することができなかった。 作中ではこの種族は、『トマス伝福音書 新資料にもとづく改訂評釈書』という本と、同書に紹介される、中米コスタリカのチブチャ(Chibcha)系先住民の伝説によって語られる。筆者はコスタリカ出身の神父で、マンハッタン下町のアパートに居住している。 本および筆者によると、人類の発祥の地はコスタリカのパライーゾ(Paraiso, 楽園)という土地であるという。現代においてもその地には同名の町があると筆者は語っている。 数十万年前、最初の人類はこの地に住み、聡明な女王に統治されて幸福に暮らしていた。しかし、周辺のジャングルからあらわれた侵略者に襲われ、人類は故郷を捨てて北へと逃げ去り、全世界へと拡散したのだという。 この侵略者については正体も名も不明だが、人類とは異なった種族であり、神が人間の前に創造した種族かも知れないと言われる。伝説を伝える先住民の一部はこれを悪魔としているが、チブチャ族は「神の子」と呼んでいるという。 彼らは戦いを好み、きわめて頑強で俊敏な種族だった。一方で伝説によれば、神は彼らを創造したとき、憐れみの心を持たせるのを忘れたという。彼らは非力な人間の邑を襲って破壊し、食糧や住民を奪って生活することを続けていた。 戦争と略奪の生活を改めない彼らを滅ぼすべく、神は三度にわたって呪いをかけた。最初に、彼らの女性をすべて不妊にしたが、彼らは人間の女性をさらうことで殖えつづけた。そこで神は彼らの男性の性器を萎えさせたが、それでも彼らは同じく繁殖を続けた(方法は不明だが、作中の描写を見るに、手で精液を搾りだし、捕らえた人間の女性の子宮まで届かせることで受精させているのかも知れない)。 最後に、神は彼らの目を閉ざして視力を奪った。彼らは人間への優位性を失ってジャングルへと敗退し滅んだ。最後の者が死に絶えたのは20万年も昔だという。 しかし、彼らは実際には死に絶えていなかった。『王国の子ら』においては、ニューヨークの地下や下水に隠れ住み、地上の人間に敵意を抱きながら、夜の闇、そして大都市住民の頽廃や犯罪の影にまぎれて「繁殖」の機会をうかがっている。視力を失い地上と隔絶した彼らは、もはや手当たり次第に女性を襲うため、幼児や高齢者をも無差別に対象とすることが、行為のおぞましさに拍車をかけている。 地下の電気施設にも出没する彼らは、配電設備を破壊すれば、地上の人間の生活を麻痺させ、夜を闇につつむことができることを学習した。1977年7月におきたニューヨーク大停電は、彼らの仕業であることがほのめかされている。史実においては、ニューヨークに混乱と犯罪の多発をもたらし、市民に多大な恐怖をもたらした事件だったが、本作中においては、彼らは夜闇にまぎれて地下から姿をあらわし、混乱する住民に恐怖を振りまきながら存分に「目的」を果たした。 なお、この事件は「大停電・大災害の後には出生率があがる」という説の実例として挙げられることが多く、作中においても触れられているが、きわめて皮肉で忌まわしい真相が暗示されてもいる。 彼らの姿は、老人もしくは子供をおもわせる姿で、皮膚は青白く、やせ衰えた印象だという。これは数十万年にわたって地下に隠れ住んできた影響なのかもしれない。しかしその俊敏さと強靭さはいまだ健在である。 落ちくぼんだ眼窩には、伝承のとおり目は失われており、奥にビーズのような玉が赤く光っているのみである(ある程度の視力は残っているようである)。口はさらに異様で、円い吸盤型のものであり、尖った鉤のような歯が生えている。全体として、人間よりはサナダムシの頭部を思わせる外観だが、兜のような頑丈さを持つといわれる。 手は水掻きのついた星型のものであり、彼らは出没する場所に、その形をなぞった印を書きなぐることがある。 TRPG『クトゥルフ神話TRPG(Call of Cthulhu)』では、「ゾ・トゥルミ=ゴ(Xo Tl'mi-go)」という名が付けられているが、由来は不明である。
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T・E・D・クライン『王国の子ら(Children of the Kingdom)』 |
ミリ=ニグリ (Mili-Nigri/特になし) | |
色浅黒い異様な種族 | |
奉仕種族 | ***** |
チャウグナル・ファウグンの眷族であり、彼がローマ時代にスペインのピレネー山脈に棲んでいた時に、従者として蟇の肉から創り出したと言われている。「ミリ=ニグリ」とは、ラテン語で「小さな黒い者」を指す。 残忍な性質を持つ、浅黒い肌の矮人族であり、言葉を話す事はできず、身振り手振りで意思を伝える。意志を持つのではなく、チャウグナル・ファウグンの思考がそのまま彼らの思考となるらしい。 毎年三月一日と十一月一日になると山頂に火を焚き付け一晩中休む事無く吠えたけり、踊りはね、太鼓を打ち叩くという儀式を行うが、この時には麓の人間をさらって生け贄にするらしい。夏になると年に一度だけ山から下りて、人間の商人と物々交換を行う。 実は彼らもニャルラトホテップ等と同じく、ラヴクラフトの夢に現れた存在がモデルとなっている。ラヴクラフトは「古代の世界に戻っているのだと思うと、決まってローマが第二の祖国になる」というほど古代ローマに愛着を持っていたが、1927年のハロウィンの夜に見た夢の中で、イベリアに駐在するクアエストル(検察官)となり、住民を脅かす色浅黒い民族に関わる事になった。とは言え、実際にその姿を目にした訳ではなく、また、その時は口の聞けない矮人族という話ではなかったらしい。 ラヴクラフトはこの夢を小説化しようと思っていたが結局そうならず、彼の許可を得たロングが『恐怖の山(The Horror from the Hills)』という題で小説化した。作中に登場する隠者の夢の内容は、ラヴクラフトの夢がほぼそのまま引用されている。
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F・B・ロング『恐怖の山(The Horror from the Hills)』 |
無貌の神 (The Faceless God/顔のない神) | |
黒き無貌のスフィンクス | |
古代エジプトにおいてニャルラトホテップが、全世界最古の神、復活の神、カルネテルの黒き使者として崇拝されていた時の姿。
恐ろしい意匠の三重冠を戴き、ハイエナの体と禿鷲の翼を持つ黒い無貌のスフィンクスという姿であるとされ、砂漠の中にその石像が造られていた。当時のニャルラトホテップ崇拝の儀式は、人肉嗜食や死体性愛を含むおぞましい物であったという。 知られざる王朝の神官、ネフレン=カーはファラオの座を簒奪し、ニャルラトホテップ崇拝以外の信仰を禁じた。そして白痴の運命の(恐らくはニャルラトホテップの)象徴たる〈真実の盲いた類人猿〉に生け贄を捧げ続けたために王座を追われ、捕らえられて生きたままピラミッドに埋葬された。これを機に、ニャルラトホテップを初めとする古代の神々はネフレン=カーと共に、『死者の書』を初めとするあらゆる文書から抹消され、神官達もいずこへとも知れず消えていったという。
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R・ブロック『無貌の神(The Faceless God)』 |
無名都市の住民 (不明/特になし) | |
匍匐する爬虫類、半透明の幽鬼、這いずるもの | |
独立種族 | ***** |
アラビアの砂漠のただ中に位置する禁断の無名都市の住民であった生物。 彼らは全体として鰐や海豹を思わせる、小柄な人間ほどの爬虫類であり、前足は人間の手に酷似しているが、最も特徴的なのは、角や大きく突き出た額、鰐の様な顎、鼻の欠如等、他に類を見ない奇妙な特徴を持つ、その頭部である。寿命によって死ぬ事はないが、死んだ場合はミイラに加工され、飾り付けられて木とガラスの箱に収められる。 この生物は死に絶えてしまった訳ではなく、無名都市の地底深く、真鍮の巨大な扉の向こうの燐光に満ちた空間には彼らの生き残りが潜んでいる。現在、彼等は霊体のような存在と化しており、毎夜、無名都市の奥から地上へと吹く霊風に乗って地上へ現れ、夜明けと共に再び扉の彼方へと帰る。 アフリカ大陸が出来るより昔に、海のほとりの肥沃な谷に、壮麗にして巨大な都市(後の無名都市)を築いて繁栄を謳歌していたが、海が後退し、都市が砂漠に包まれ始めた為、都市の地下へと移り住んだ。自分たちを逐いやった地上の大気と、人間を始めとする、大気を呼吸する全てのものに対して憎悪を抱いているらしい。 なお、ダーレスの『ネイランド・コラムの記録(The Statement of Nayland Colum)』に依ると、無名都市は海辺ではなく海底にあり、爬虫類はクトゥルーを崇拝する海中生物だったが、ムーやアトランティスを水没させたものと同様の天変地異によって海が干上がった為に、爬虫類達は海水の残る地下へと移り住んだのだという。
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H・P・ラヴクラフト『無名都市(The Nameless City)』 A・W・ダーレス『ネイランド・コラムの記録(The Statement of Nayland Colum)』 |
ムンバ (M'bwa/ンブワ) | |
かつて来た最初の者 | |
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コンゴ(ザイール)とウガンダの間にある月霊山脈の奥地の谷にある〈回転流〉の中に棲む古き邪神(Evil Old One)に仕える存在。〈回転流〉に近づくものがあれば直ちに捕らえ、麻酔効果を持つ酒とある種の外科手術で『化木人(Tree-Men)』に変えてしまう。『化木人』は徐々に人間の意識を失い、最終的には本物の樹に変わってしまうが、早期に脚を切り離せば助け出す事も可能である。 ムンバは生気のない顔と虚ろな眼、屍体のような体を持っているが、姿についてさほど特筆されていない事を考えれば、人間とはさほどかけ離れた姿ではないのとも考えられる。「かつて来た最初の者」という異称を持っており、最初の化木人より前に来た人間が古き邪神によって僕とされたものがムンバであるのかも知れない。
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D・ワンドレイ『脚のない男(The Tree-Men of M'bwa)』 |
名状しがたいもの (The Unnamable/名状しがたきもの) | |
特になし | |
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アーカムの古い埋葬地と、その近くにある廃屋にまつわる怪異。 屋根裏部屋に窓のあるその家は18世紀、忌避される墓のそばに記銘のない粘板岩の墓石を据えた、子供にめぐまれず打ちひしがれ怒りをつのらせる老人が住んでいた。 ランドルフ・カーターの先祖の、1706年から1723年にかけての日記によると、窓辺や林の近くの無人の草原で、片目が損なわれた奇怪な存在が見かけられている。ある晩にはカーターの先祖が何者かに暗い谷間で捕えられ、胸に角、背に鉤爪による傷跡をつけられ、地面には先の割れた蹄や類人猿のような足の跡が残されていた。また別の晩には、騎馬郵便配達夫が、夜明け前のおぼろな月明かりのメドウ・ヒルでおぞましくも跳びはねる名状しがたいものを呼びながら追っている老人を目撃した。 のちに、ランドルフ・カーターは廃屋の軒下で、人間のものに四インチの角を持つ頭骨をふくむ、とても一体の生物とは思えない異様な姿の骨格を発見している。 老人は1710年に、墓地近くの家の裏の墓穴に埋葬されたが、家の屋根裏部屋に通じる扉には状がかけられたままだった。人々は恐れて廃屋に近寄ることもなく、不気味な伝承を語り継ぎながら無事を祈っていたが、やがて牧師館にて怪事件が起こり、生存者はおろか五体満足な死体すら残らなかった。 以来、埋葬地の廃屋とその背後の墓、そして老人が据えた、そばに一本の若木が生える墓に、月のない夜に出没する名状しがたい亡霊の恐怖が近隣で語り継がれてきた。亡霊は巨大な獣の姿をしていて、目に見える事もあれば感じられるだけの事もあって、人々を突き殺したり窒息させる事もあると言う。1793年にはある少年が、様々なものが見えると噂される屋根裏部屋の窓をのぞきに行き、発狂して悲鳴をあげて戻ってきた。 この恐怖を確認しようとしたカーターとアーサー・マントンは、名状しがたいが同時に無数の恐ろしい形状を取り、傷ついた目を持つ、ゼラチンのようにねばねばした怪異に襲われ、全身に奇怪な傷を負った。 ランドルフ・カーターの解釈によると、物理法則の制限を受けない死後の霊魂は、名状しがたいとしか言いようのない形、あるいは形の欠如をとって現れる筈であり、ましてやそれ自体が自然にそむく異形の存在の亡霊ならば、さらに名状しようのない混沌とした姿で顕現するのである。
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H・P・ラヴクラフト『名状しがたいもの(The Unnamable)』 |
盲目のもの (Flying Polyps/特になし) | |
食肉種族 | |
独立種族 | ***** |
かつて外宇宙から地球に飛来しした種族の一つ。ラヴクラフト『時間からの影(The Shadow out of the Time)』においては名が与えられていないのだが、ケイオシャム社のTRPG『クトゥルフの呼び声(The Call of Cthulhu)』において、「盲目のもの(Flying Polyps)」の名が与えられている。 六億年ほど前に太陽系を含む四つの恒星系を支配したこの種族は地球にも飛来し、巨大な玄武岩の都市を築き、生物を手当たり次第捕食した。しかし、やがて新しく飛来したイースの大いなる種族によって駆逐され、地底へと追いやられた。 その後、彼等は長きに渡って「大いなる種族」への攻撃を試み、最終的には復讐を果たして「大いなる種族」は現人類滅亡後の時代へと逃れ去る事になるが、もはや地上を制圧する力は残っていなかったらしく、現在に至るまで地底の深淵に留まっている。確認されているらしいものとしてはオーストラリア西部のグレートサンディー砂漠、南緯22度3分14秒、東経125度0分39秒の地点に埋まっている、かつての「大いなる種族」の、そしてさらに昔は彼らのものであった都市の廃虚の地下に、未だ生き長らえていると言われる。 彼らが再び地上に姿を現わすことはついになく、人類の次に栄える甲虫類の時代には絶滅していると言う。この甲虫類は「大いなる種族」の次の宿主となるが、「大いなる種族」も「盲目のもの」が生き残っている時代で生活したくなかったのかもしれない。もしそうだとすると、この恐ろしい種族によって人類は、「大いなる種族」に肉体を奪われる危険から救われていることになる。 彼らは通常の物質と異なる物質で構成された、5本の足を備えたポリプ状の肉体を持ち、飛行や透明化、そして風を操って獲物を引き寄せたりする能力を持つ。その思考形態は人類は勿論、「大いなる種族」や古のもの等とも遥かに異質であり、テレパシーや精神交換は不可能である。
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H・P・ラヴクラフト『時間からの影(The Shadow out of the Time)』 |
モルディギアン (Mordiggian/特になし) | |
食屍鬼の神 | |
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最後の大陸ゾティークにある都市、ズル=バー=サイールの地下に棲む神。
ズル=バー=サイールの町で死んだ者は皆、モルディギアンに贄として捧げられるという掟があり、死者が出るとモルディギアンの神官達が死体を引き取りに来る。王よりも強い権力を持つモルディギアンの寺院の引き取りを拒む事はできないが、ズル=バー=サイールの住民は死体が神に食べられる事を厭わず、むしろ死体は蛆や腐敗から、生者は葬儀に関わる厄介事から免れる事ができると考えている。 なお、英語で葬儀屋を指す単語は『モルディギアン』とよく似た"Mortician"だが、スミスが語呂合わせによってこの名を考えたのかどうかは不明である。 | |
C・A・スミス『食屍鬼の神(The Charnel God)』 |