ランドルフ・カーター (Randolph Carter/特になし) |
夢見る者 |
1873〜1928? |
アメリカ、マサチューセッツ州ボストン |
『ランドルフ・カーターの陳述』で語り手として初登場して以来、5回に渡ってラヴクラフトの作品に登場し、一つのシリーズの主人公となるに至っているこの人物は、『銀の鍵』『銀の鍵の門を超えて』『未知なるカダスを夢に求めて』ではラヴクラフト自身の、若干理想化された分身となっている。
彼は『夢の国』に入る事の出来る一人であったが、30歳の頃にその力を無くしてしまった。彼はその後、54歳で行方不明になるまで現実に馴染めないまま、過去の思い出や夢幻の世界の美しさに想いを馳せながら暮らす事になる。
第一次世界大戦時には外人部隊に参加しており、ニューオーリンズの神秘家エティエンヌ=ローラン・ド・マリニーと知り合っている。また、1916年にフランスのブロア=アン=サンテールという町で重傷を負っている(彼は1897年に既にこの事を予知していた)。 カーターの目的は『夢の国』の空中都市イレク=ヴァドに王として君臨する事だったがウムル・アト=タウィルと『古きものども』と対面し、導かれる中でさらなる高みを目指そうとする。その探求の過程で、彼は自分の分身の一つであるヤディス星の魔道士ズカウバの肉体に精神を移した。だが、カーターの最初の見込みと異なり、彼はズカウバの肉体に宿ったまま、元の世界に帰還する事が出来なくなってしまうのである。 長年の研究の結果、地球への帰還に成功した彼は人間に変装し、インドの聖者にして神秘学の研究家『チャンドラプトゥラ師』と名乗っていた。世界の研究家と連絡をとり、人間の姿に戻るための研究を続けていたが、自分の遺産分割に関する会議に出席した時に現れたズカウバの意識によってイアン=ホーの柱時計の中に姿を消してから姿を消し、彼の行方は遥として知れない。
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H・P・ラヴクラフト『ランドルフ・カーターの陳述(The Statement of Randolph Carter)』 『名状しがたきもの(The Unnamable)』 『銀の鍵(The Silver Key)』 『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream Quest of Unknown Kadath)』 『銀の鍵の門を越えて(Through the Gate of the Silver Key)』 |
ジョセフ・カーウィン (Joseph Curwen/特になし) |
1662年か1663年〜1771年? |
アメリカ、マサチューセッツ州セーレム村(ダンヴァース) |
1662年か1663年の2月18日(旧暦)、セーレムより7マイル離れたセーレム村(現在のダンヴァース)に生まれた。 15歳のときに家出して海外におもむき、9年後に帰国してセーレムの町に住み着いた。家族ともほとんど交渉を持たず、ヨーロッパから持ち帰った奇怪な書物を読んだり、ヨーロッパの船で届けられる化学薬品をあつかうなどして暮らしていたが、郊外に出かける行動が詮索を呼んでいた。友人はセーレムのサイモン・オーンとセーレム村のエドワード・ハッチンソンといった、やはり疎んじられる人物しかおらず、頻繁に交流を持っていた。 1692年に魔女狩り騒動がおきるとセーレムより姿を消し、プロヴィデンスに現れ、タウン・ストリート西のスタンパーズ・ヒル(後のオルニー・コート北側一番地)に住居を構えた。 海運業を営み、プロヴィデンスへの貢献をつねに行っていたが、秘密めかした行動や所有する数々の魔道書、オルニー・コートの私邸およびポータクシット街道に所有している農場の不穏な様相、国内外から買いつける怪しげな品など、何より、何十年、百年たっても老いない容貌に、不審が集まった。こうした悪評を和らげるべく、1763年3月7日に、部下であるデューティ・ティリンガスト船長の娘イライザと結婚したが、1766年7月初旬以降、昔の人間のみが知るような情報をほのめかしたり、墓場にかかわる場所をうろつくなどの奇怪な行動が目立つようになり、イライザの元婚約者エズラ・ウィーデンの調査によって、不穏な行動が判明していった。 カーウィンは、サイモン・オーン、エドワード・ハッチンソンとともに、宇宙の法則にまで関わる邪悪な目的を目指していた。そのために、世界各地の墓地から死体を集め、その死体より生物の精髄たる塩を抽出し、ヨグ=ソトースの力を借りて死者を復活させる魔術を使って、古代の賢者たちの知識をかき集める儀式を行っていた。のちに、1928年、マライナス・ウィリット医師が、ポータクシットの農場跡に残っていた地下実験室に踏み込んだところ、そこには無数の壷――《護衛》用の死者の灰が詰まった 1771年4月12日の夜、カーウィンの所業の裏に邪悪な目的を嗅ぎつけたプロヴィデンスの有志がポータクシットの農場を襲撃し、カーウィンを暗殺してその野望を打ち砕いた。 しかしカーウィンは、時間の外で眠りにつき、自分に似た子孫を捕らえる魔術を作りあげており、イライザとの娘アン・ティリンガストの子孫であるチャールズ・デクスター・ウォードを誘導して自分の業績を突き止めさせ、自分を復活させるように仕向けた。 チャールズの実験によって、1928年に復活したカーウィンは、ポータクシットの農場跡に建っていたバンガローをチャールズに買わせ、アラン博士と名乗って、チャールズを操って邪悪な目的のための実験を再開した。しかし、チャールズが邪悪な計画を阻止しようとしたため彼を殺し、容姿の類似を利用して成り代わった。 3月に、チャールズ・ウォードが狂気に陥ったものとして、プロヴィデンス近郊のウェイト精神病院に収容されたが、真相に気づく者はいなかった。しかし、事件の真相を突き止めたマライナス・ウィリット医師に正体を看破され、ウィリットが見つけ出した呪文によって蘇生の魔法を破られ、死灰にもどった。
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H・P・ラヴクラフト『チャールズ・デクスター・ウォード事件(The Case of Charles Dexter Word)』 |
エイベル・キーン (Abel Keane/特になし) |
特になし |
〜1947年? |
特になし |
ボストンのソーロー・ドライヴ17番地に下宿する神学生。
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A・W・ダーレス『エイベル・キーンの書置(The Watcher from the Sky)』 『ホーヴァス・ブレインの物語(The Narrative of Horvath Blayne)』 |
クニガティン・ザウム (Knygathin Zhaum/特になし) |
特になし |
ヒューペルボリア時代 |
エイグロフ山脈? |
ヒューペルボリアの王都コモリオムより一日でたどり着くエイグロフ山脈を根城とするヴーアミの盗賊団の首領。エイグロフ山脈低地帯の村々を襲撃し、略奪と人肉嗜食などの残虐行為によって人々を戦慄させた。 クニガティン・ザウムは母方に、エイグロフ山脈のヴーアミタドレス山に潜むという太古の邪神ツァトゥグアとの血縁があると囁かれ、そのせいかクニガティン・ザウムは暗褐色の毛皮に包まれるヴーアミに相応しからぬ、黒と黄色の大きな斑紋を持った無毛の皮膚をしていた。 クニガティン・ザウム一党の略奪はついにコモリオム近郊にまでおよび、 捕えられたクニガティン・ザウムは、コモリオムの大広場中央にあるエイオン材の断頭台にて首切り役人アタマウスに首を刎ねられたが、
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C・A・スミス『アタマウスの遺言(The Testament of Athammaus)』 |
タイタス・クロウ (Titus Crow/特になし) |
1916年〜 |
イギリス、ロンドン |
イギリスのオカルティスト。豊富な知識と幅広い人脈、強力な力を備えた魔術師であり、その力を持って黒魔術や魔物、さらには邪神に対抗している。作者であるブライアン・ラムレイ自身が『タイタス・クロウの事件簿(The Complete Crow)』で述べているように、クロウは敢然と怪奇に立ち向かう、ラヴクラフトの作品とは相当にかけ離れた性格の主人公である。彼の物語も超人的な勇者の英雄物語という性格を有している。 タイタス・クロウの出生が描かれたのは、シリーズのかなり後になってからだが、彼の出生にはサハラのサヌーシー教団(リビアのイスラム教団)の〈霊液〉が関わっている事になっている。この〈霊液〉は「汚れなき者」を「覚醒させる」効果を持ち、偶然から、誕生間もないクロウはこの〈霊液〉を受けた。 第二次世界大戦中は陸軍省に勤務し、ヒットラーの神秘主義に関する対策と、数秘術と暗号術を用いての暗号解読の任に就いていた。戦争が終わると職を失ったが、〈妖蛆の王〉ジュリアン・カーステアズとの戦いを契機として、邪悪な魔術との戦いに人生を捧げることを決意する。 以来、ロンドン郊外のブロウン館に居を構え、様々な貴重な魔道書や珍品を収集する一方、友人アンリ=ローラン・ド・マリニーと共に様々な怪異を目にし、あるいは立ち向かってきた。やがて、対邪神組織〈ウィルマース・ファウンデーション〉に参加して、邪神との戦いに身を投じる。遂には『銀の鍵の門を越えて(Through the Gates of Silver Key)』 に語られる、エティエンヌ=ローラン・ド・マリニーの所有していた時計を用いて、異界へと旅立って戦いを続けることになる。
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B・ラムレイ『黒の召喚者(The Caller of the Black)』 『魔物の証明(An Item of Supporting Evidence)』 『ド・マリニーの掛時計(De Marigny's Clock)』 『名数秘法(Name and Number)』 『妖蛆の王(Lord of the Worms)』 『誕生(Inception)』 |
エドガー・ヘンキスト・ゴードン (Edbar Henquist Gordon/特になし) |
幻想・怪奇小説作家。ウェールズの魔法使いの血を引き、宇宙の最果ての暗黒都市やあらゆる物質を超越する無定形の玉座から話しかけた奇妙な住民、奇怪な幾何学や超地球的な生命形態といったものを夢に見て、それを元に恐ろしい作品群を生み出した。そうした夢の内容は『ネクロノミコン』『妖蛆の秘密』『エイボンの書』などの書物との共通点があったが、ゴードンはそうした書物を読む以前から恐ろしい夢の内容を見ていたという。 やがて、『ガーゴイル』『夜の魍魎』『混沌の魂』といった余りに病的な作品を発表して不評を買い、小説の内容は病的な変化を示し、同時に人間関係の面でも孤立して、夢の内容へと囚われるように長い睡眠へと耽溺してゆく。彼の夢の中に〈暗きもの〉という存在が登場し、啓示を与えていたのだ。ゴードンは、〈暗きもの〉と一体化し、メシアと化すことを望むようになった。 だが、彼の望みは、邪神のあたえる恩恵の例に漏れず、恐ろしいものとして実現した。最後の夢によって柔毛に覆われる漆黒の魔物という〈暗きもの〉の移し身に変じた彼は、目覚める前に射殺された。 背が高くやせ細っており、青白い顔と落ち窪んだ目などの特徴、「夢想家」という表現や、幅広い文通網、夢から創作の着想を得る、などの点からして、同じブロックの作品『星から訪れたもの』と同様に、ゴードンのモデルが(奇人、夢想家の面を特にカリカチュアした)ラヴクラフトであることは間違いないだろう。
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R・ブロック『闇の魔神(The Dark Demon)』 |